Interview

東大受験やプロ野球選手のように、中学生が本気で起業を目指す未来 ――「Pedia Venture Program」正田圭

text by : 編集部
photo   : 編集部,TIGALA株式会社

近年、学生起業家・若い起業家が増えてきた。
日本では15歳になれば法人設立に必要な手続きが可能となるが、若い起業家の大半は大学在学中など18~25歳が中心となっている。そんな中2017年12月に「小学校高学年~中学生」を対象とした起業支援プログラム「Pedia Venture Program」が発表された。
プログラムの中心人物は、自身も15歳で起業し現在はTIGALAの代表を務める正田さん。
なぜ、15歳以下の子供たちに起業支援プログラムが必要なのか?自身の経験や周囲の10代起業家の話も含めてお聞きした。

正田 圭 (まさだ・けい)
15歳で起業。インターネット事業を売却後、M&Aサービスを展開。事業再生の計画策定や企業価値評価業務に従事。2011年にTIGALA株式会社を設立し代表取締役に就任。テクノロジーを用いてストラクチャードファイナンスや企業グループ内再編等の投資銀行サービスを提供することを目的とする。

■最初に仕事をする時、会社経営からスタートしたほうが仕事の本質がわかる


――中学生の起業を支援する「pedia venture program」は、正田さん自身が15歳で起業した経験も背景にあると思うのですが。

そうですね、僕が起業した頃の15年以上前と比べて「早くやることのアドバンテージが出てきたな」と感じます。
いまはベンチャーキャピタルの中にも、優秀でリスクを取れる若い人を探している方が多いですし、「大学中退して起業します」という若者をむしろ評価する風潮がある。むしろ若い方が資金調達しやすいとすら思います。

僕が起業した約15年前はむしろ逆で、若い起業家といってもせいぜい20代後半。
資金調達環境も現在と異なり、金融機関から借り入れるケースも多かったです。僕も起業時に「せめて年齢が25歳くらいで、妻や子供がいたら融資を受けやすいのにな」と言われたことがあります。

――若いことがネックだった当時と、若いことが強みのある現在という差ですね。

はい、今は急成長している企業でインターンを経験する、新卒でベンチャーキャピタルに入社するなどして、その後起業するケースもありますよね。

一昔前だと、20代で独立するにしても3〜5年くらい修行してから独立するということが多かったと思いますが、今時の若手起業家は1年もたたないうちに独立します。
1年もしないうちに投げ出したやつ、続かなかったやつと評価する人もいるかもしれませんが、実際こういう起業家がしっかりと結果を出しているのが今の時代です。

――そういう状況で、今回のプログラムを立ち上げる意味というのは?

人生で、一番最初に働く経験は、「起業」であったほうがよいのではないかと思ったことです。
普通は、みんな人生で一番最初に働く経験って雇用だと思うんですよね。しかしそれが良くない。「雇われ癖」がついてしまうのです。
就職に限らず学生アルバイトもですが、原則的に自分の時間を「1時間1,000円」とかで売る、これは時間を渡すからお金が手に入るという経験です。

対して会社経営はいわば真逆です。「いかに時間もお金も手に入れるか」の闘い。
仕事の原体験が「時間を売らないとお金は手に入らない」だと弊害もあります。

もちろん、全ての人が一生起業家として生きるわけではありませんし、就職を否定するわけでもありません。ただ、最初に仕事をする時に会社経営からスタートしたほうが、就職するにしても仕事というものの本質をよくわかるのではと考えています。

だから学生のうちに一度起業したほうがいい。
ここ数年間で、一層この考えを確信するようになりました。

pedia venture programは4月からスタート予定で現在参加者を募っている段階。
中学生は無料だが、高校生大学生が参加できるプランもある。


■いまの親世代は子供に「自分で稼げるようになってほしい」と願っている


――正田さんは2016年3月「15歳で起業した僕が社長になって学んだこと」を出版されましたが、その本への反響も、今回のプログラムに関係していますか?

はい。あの本への反響は当時若い方からも多かったですが、実は、親世代の方からも多く反響や感想を頂きました。
そこで見えてきたのは「いまの10代の子の親世代が子供の人生に望むもの」の変化です。

僕の本に寄せられた親世代からの声で感じたのは
「子供にはお金を稼げるようになってほしい」という願望です。

近年の、子供にプログラミングを習わせようとか、STEM教育、モンテッソーリ教育といったものが話題になる背景にも、親世代の同じような願望を感じます。

――なぜ「稼げるようになってほしい」と願うようになったのでしょう。

僕は「相続0円時代だから」だと思います。
親世代に貯金がなく、以前のように祖父母が貯金や土地も持っているわけでもない、長生きの時代になり自分の老後資金も必要。

子供に相続させられるものがほぼないのです。だからこそ「自分で稼げるような人になって欲しい」という願望になる。

ただ、大半の人は「どうすれば稼げるか」を実体験を元に教えることができない。漠然と「エリート・高学歴」とは何か違うものだということもわかっている。

――その考えがある親世代に、お子さんに「起業」という選択肢も提示しようと。

そうです。子供が起業するというチャンス・選択肢を親御さんに容認してもらう。
それと同時に親世代に対しても「あなたたち自身まだ若い。あなたもチャンスです」という意味も込めています。

親子共同で起業しよう、とまでは言わないですが、一緒に起業のことを考えたり、親が「俺は退職金で起業する、お前も最初の面倒は見るから何かサービスでも立ち上げてみろ」と、そういう親子関係があってもいいなと。

――確かに子供が東大目指すなら両親一丸となるのは自然なので、起業において同様のことがあっても良さそうです。

はい、子供を東大に活かせるためにスパルタ教育をした、小さい頃から父親が野球を教え込み二人三脚で一流のプロ選手になったという話はごく自然ですよね。

ただ、会社経営や起業において同様のものがない。
父親が子供の事業プランやプレゼンを見て「お前のプレゼンは全然だめだ!」と言った話を聞いたことがない。

今回のプログラムが、子供に勉強させるかスポーツチームに入れるか?と同様に当たり前の選択肢として、親世代に認識されてほしいなと考えています。

※自身の体験を元に出版された「15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと」は
現在よりもベンチャー支援環境が恵まれていなかった時代のハードな体験、そこからの学びが得られる。


■勉強も野球もサッカーも、10代からの育成制度がある。起業にはそれが無い。


――若い方が起業する環境は良くなっている、でも「まだ足りていない面がある」とも考えていますか?

2つあります。1つ目は「18歳以下における育成環境」です。
たしかに若い方が起業しやすい時代ですが、若者に注目する投資家も大抵は18歳~25歳がターゲットです。

でも、実際は15歳から起業できる。
「15歳になったら起業しよう」と13歳あたりから下準備したり、起業家予備軍を支援する人がいるかというと、いません。

――たしかに18歳以下で起業する方もいますが周囲の支援を受けて、といった感じではないですね。

これが勉強やスポーツならちゃんと受け皿がある。
小学校から東大合格を視野に入れて勉強する塾など。

野球なら18歳でプロ野球選手になるために、12~13歳から視野に入れてリトルリーグやユースチームで育成される。リトルリーグから甲子園出場、そしてドラフトで指名されてプロ入り。一流なら最初からメジャー。

しかし起業にこのロードマップはありません。
非凡な才能を持つ15歳の起業家が、高卒のプロ野球選手並みに「当たり前」に輩出されるべきだと思います。

――2つあるとおっしゃってましたが、もう1つはなんですか?

内部環境でしょう。まずは「家庭の問題を解消し、親の理解を得る」です。
実は10代で起業する子で多く見られるのは「親の理解が得られずに起業を挫折する」というものです。実際僕も起業した時は親に隠していました。

若くしてファンドを起ち上げた某ベンチャーキャピタリストは、取材記事がメディアに出た2時間後に親から連絡がきて「何をしている、一度帰ってきて説明しろ」と言われたそうです。

――なるほど、親が起業やベンチャー投資を理解できない、と。

はい、正直僕の著書も出版後一部の親から否定的な意見が寄せられました。
「若いうちから金儲けだなんて」「人様のお金を預かって投資!?」「うちの子には絶対起業させない!」などなど。

野球選手目指してリトルリーグに入部しても、東大目指して塾に行きたいと言い出しても、たぶん同様のことは起こりませんよね。
同じように子供が起業したいと考え行動するとき、親の理解を促すことはとても大事なんです。

僕はおかげさまで著書や経歴もあるほうと評価していただけるのか、周囲に10代で起業した・起業を考えている子と話す機会が多く、13~14歳で起業を考える子は大抵優秀だということもわかっています。

能動的に動いて、自分で試行錯誤できる。僕やこのプログラムの講師陣より優秀な子もたくさんいると思います。だからこそ、起業を考えている10代の子に「何かを教えてあげること」と同じかそれ以上に、親世代に「ベンチャー起業」を理解してもらうことの必要性を感じています。

今回のプログラムは1年かけて事業計画や起業のノウハウを学び、多くのメンターも招聘する。
純粋な「学び」の場で終わらせず、総額10億円の調達をする起業家を輩出することを目指している。


■10代起業家にとって親子関係は重要。親が子離れしなければいけない。


――10代だと、やはり起業するにしても親との関係性は大事ですよね。よく起こりがちなケースはありますか?

「子が親離れできない」ケースだけでなく、「親が子離れできない」パターンもよくあります。
起業って、一度も失敗しないってあり得ないじゃないですか。
そもそもリスクをとってリターンを得るもの、むしろ最初に多く失敗して学べた方がいい。

10代で起業した子の中には、親が打合せや取材に口を出し過ぎるケースもあります。起業に反対はしないけど、逆に過干渉になってしまう。

まず親が離れないと子供の成長機会を妨げると認識する必要がある。
起業すると平均3回失敗すると言われています。しかし10代起業家の中には「やるだけやったけどダメだった」と自分で決断するよりも、「途中で親に強制的に止められた」パターンが多い。

――市場に挑んで勝ち負け、ではなく先にセコンドがタオル投げて途中棄権すると。

そうです。負けそうになると親が止めちゃう。
自宅登記した10代起業家が、少し資金繰りが悪化して内容証明郵便が届く。するとそのたった一通の内容証明を見た親が過敏に反応して止めさせられたり。

僕は親が子離れできていたケースですが、中には親の干渉を嫌って起業後の数年間絶縁状態になる子もいます。もっと健全な親子関係と起業が共存する仕組みがあるべきだと思います。

――海外だと、小さいうちからプログラミング初めて10代で起業って話も聞きますよね。

そうですね。海外はリスクに対して鈍感なのかもしれないし、子供に小さい頃からレモネード売らせてみるなど、小さい頃から商売を経験させる文化がある気がします。

このいいところは、時間を売っていません。
効率よくレモネードが売れた方が褒められる。それが「仕事」というものの原体験になることで後の起業に向けていい影響を生んでいる気がします。

事業譲受した「Pedia」も今回のプログラムにおいてビジネスプラン作成のための情報分析、ニュースの深い理解に繋げる形で貢献する予定。


■甲子園球場は学生のために作られた。若者にお金をかける文化が必要。


――「pedia venture program」はどういう場にしていくイメージでしょう?中学生がメインのアクセラレータープログラムをイメージしたのですが。

僕がイメージしているのは「甲子園球場」です。
漫画「インベスターZ」の引用ですが、甲子園球場は元々高校生が試合をするためにあれだけ大規模な予算をかけ作られました。それを今、高校野球で使っていない時期にプロ野球にも貸している形です。

この「若者の場にお金をかける文化」があるべき姿だと思っています。
若い人たちこそ活躍でき、次(野球ならばプロ野球や大リーグ)に繋がる場所。
起業家なら成長できる環境、事業を伸ばすチャンス、資金調達。そういう意味で起業の甲子園球場を目指しています。

――甲子園ってことはわかりやすく勝ち負けもあるし、優勝もある。

はい、だからこのプログラムをやる上で「総額で10億円調達を目指す」というのも、定量的な目標があるべきだと考えたからです。

プログラムを受けた中学生起業家に総額10億円調達させる。
それがたった一人の天才中学生が9億くらい調達してしまうのかもしれないし、100人くらいが1000万円ずつ調達するのか、そこはわからない。

大事なのは、中学生起業家でも、大人顔負けに調達できるんだ、起業に年齢なんて関係ない、だったら早くから真剣に準備しようという文化が生まれること。

――なるほど、そして失敗しながら貴重な体験が得られると。

そうですね。もちろん失敗することは視野に入れますが、やるからには僕はその起業家たちを勝たせに行くつもりです。

と、いいながらも実は、僕らの方が年下の方から学ぶことも多いのではないかと思っています。
いま、誰が最先端なものを生みだせるか?と考えたら中学生じゃないかと。中学生起業家が本気で考えたビジネスプランが一番勉強になるんじゃないかって思います。

――正田さん自身も学ぶところがあると?

はい。このプログラムを無料にしている理由はそこです。
中学生向けだから、というのもありますが僕らが学ばせてもらう価値も大きい。
じゃあ対等な関係じゃないかと。

――一方的に教えるような場ではないと。

そうですね。みんなで教え合うみたいな。
プログラムに集まる人たちは「起業」に向けて意識が強い人同士、そこから刺激を得られると思います。


正田 圭 (まさだ・けい)
15歳で起業。インターネット事業を売却後、M&Aサービスを展開。事業再生の計画策定や企業価値評価業務に従事。2011年にTIGALA株式会社を設立し代表取締役に就任。テクノロジーを用いてストラクチャードファイナンスや企業グループ内再編等の投資銀行サービスを提供することを目的とする。

インタビュー:波多野智也(アスタミューゼ株式会社)

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