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オープンイノベーション時代に求められる情報解析と知財人材~次世代情報解析スペース カンファレンス 基調講演(抄録)~

text by : 編集部
photo   : 編集部, NGIAS事務局

ビッグデータおよびIoT時代を迎え、多種多様なデータ・情報の有効利用が求められる現在。しかしその情報や活用事例は業界ごとに個別に蓄積されており、俯瞰的な視点で情報解析を捉える機会は多くありません。

この問題意識に基づき、11月9-10日の二日間、東京・神保町のベルサール神保町にて「次世代情報解析スペース カンファレンス」が開催され、業界有識者による講演やネットワーキングが行われました。

その基調講演(抄録)をご紹介します。

■基調講演
「オープンイノベーション時代に求められる情報解析と知財人材」
佐藤辰彦氏 (特許業務法人創成国際特許事務所 会長 弁理士)

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情報解析というものが、日本のイノベーションを考えるうえで非常に大きな役割を果たすことになると認識されるようになってきています。

背景としては「IoT」「ビッグデータ」「AI(人工知能)」というキーワードがあり、その中で事業の「選択と集中」が求められています。

さらに「オープンイノベーション」と「グローバル化」によって第4次産業革命が進む、といった具合にまさにビジネス環境は激変しているといえるでしょう。

しかし第4次産業革命と言っても、どれだけ実感があるでしょうか?

エコイノベーション=オープンイノベーションによるプラットフォームの展開、という考え方があります。市場形成のコンセプトリーダーが事業プラットフォームを構築し、OUTSIDE-IN、INSIDE-OUTによって市場を成長・拡大していくというものです。

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今そこで何が起こっているかというと、Google、Amazon、Facebook、Appleといった企業が水平型事業プラットフォームで市場を支配している、という状況があります。

たとえばGoogleは、Androidというプラットフォームによってメーカー・サプライヤーを囲い込み、市場を支配しています。ところが日本企業にはそういったことが出来ないでいます。

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日本企業にも今までのやり方では通用しない、自分たちの力だけでは無理だという認識があり、事業再編成や新規事業への挑戦、オープンイノベーションといった取り組みが重視され始めています。そこで有望な企業のM&A、有望なベンチャーへの先行投資などが検討されるわけですが、そこでは「知財マネジメント力」が問われています。

パナソニックはIoT関連特許でパテントコモンズ戦略を採り、ホームモニタリングや太陽光発電などで使われているデバイスとクラウドを結ぶ技術について、無償で利用できるようにしました。

このように、これまでは知財の囲い込みが戦略とされてきましたが、開放することもまた重要な戦略になってきています。

つまり市場を創るためには、技術の開放によって標準化を狙い、さらに自分たちだけが持つ技術を保護することによって差別化し、収益を最大化するオープン/クローズ戦略が必要になってくるということになります。

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その中で、従来の垂直統合モデルによる研究開発ではイノベーションが生まれないとして、研究開発のオープン化による共創モデルが注目されています。

このようなオープンイノベーションの流れで求められるものは、実現すべき新たな価値観に基づく社会システムのコンセプトを提案すること、そしてコンセプトドリブンの研究開発を通じて市場を創ることです。

それには、まず事業を俯瞰して強み弱みを分析する、競争環境を見極めて事業戦略のグランドデザインをする、そして事業のロードマップを作る、ということが必要です。

しかし、これを人間の力だけで行うとなると、どうしても属人的な理解に依存してしまいます。一次情報の解析においては情報解析ツールを活用し、それだけではできないことを人間がやる、というのが効率的です。

いま、情報解析の世界では、PCさえあればいつでもどこでも、シナリオを描くために必要なあらゆる情報が世界中から簡単に入手できる時代です。また、情報を処理する言語解析や解析結果のビジュアル化やAIツールの開発が進んできています。これらの情報をうまく活用すれば、客観的な情報に基づいてより精度の高いシナリオを描くことができます。

たとえば、VALUENEX社の「コア・コンピタンス俯瞰解析」では、自社/他社の注力技術領域や脅威企業の把握、空白領域の探索といったことが可能になります。

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さらに、2014年に開催された「Predictive analytics フォーラム2014」では、未来をいかに予測していくか、という”プレディクティブアナリティクス”の可能性について議論が交わされました。”プレディクティブアナリティクス”は仮説ですが、仮説が無ければ判断することもできません。

このような状況下で、経営戦略情報化の必要性というものが見えてきます。事業戦略、開発戦略、知財戦略の三位一体の経営を進化させるために、戦略情報の共有が必要になってきます。

その戦略情報として知財情報を活用し、どういうプレーヤーがいて、どういう技術を持っていて、どのような知財構造になっているのかを明らかにすることによって、自分たちの考えているシナリオがどこまで正しいのかを検証することが可能になります。

創成国際特許事務所の例をご紹介すると、特許調査・解析案件は年々増加しており、2016年では48件となっています。

分析の流れは、マクロ分析、ミクロ分析、コア分析の3ステップで行っており、たとえばSTEP3であるコア分析では、確保すべき知財を抽出し、知財を確保すべき時期を検討する、といったようなことを行っています。

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しかし、大企業と比べると、中小企業は特許分析に対してなかなかそこまではできないという問題があります。

そこで特許庁では、中小企業向けに特許情報の分析活用支援を行っており、すでにいくつかの事例が生まれています。

オープン化の時代の中では、知財戦略部門の強化が重要です。単なるサーチャーではなく、事業部門・開発部門の戦略化に寄与し、三者が一体に行動するための戦略を提案できるような、知財戦略部門の専門分化と知財プロデューサーの育成が求められています。

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知財分野の方々の活躍する時代がきたことに大きな期待を寄せたいと思います。

 

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