2019.04.25 THU ファインセラミックス3Dプリンターが、ものづくり・製造業の未来を変える。——株式会社エスケーファイン 藤井裕仁
text by : | 嶋崎真太郎 |
---|---|
photo : | 嶋崎真太郎 |
日本の経済発展を支えてきた、ものづくり・製造業。その製造業において、現在深刻な人手不足が予想されています。経済産業省のアンケートでも、9割超の企業が人材難と回答しているように技術人材の不足が大きな社会課題となっています。
単純作業においては、ITやロボットの導入によるオートメーション化が実現されつつありますが、高度技術人材の代替はいまだ実現していません。エスケーファインではファインセラミックスの3Dプリンターを国内で初めて開発。製造イノベーションを起こすと共に、未来社会の課題解決と、両面からアプローチしています。
プロトタイプを造るためではなく、実用部品を追求。
十年程前に、セラミック3Dプリンターの前身でもある、樹脂用光造形装置の開発、製造を親会社の株式会社写真化学で行なっていました。素材は樹脂で市場もあり、それなりの事業規模にもなりましたが、モデリング用途が主体で、より高い付加価値を求める事は難しい状況でした。
製造業界において、もっと付加価値の高い3Dプリンターを開発することはできないか、と5年程前に国内で初めてセラミック3Dプリンターを開発し大阪大学に納入したのが始まりです。
エレクトロニクスやエネルギー、航空宇宙業界で使われる電子デバイスや高機能触媒には、セラミックの精密部品が多数使われています。セラミックといっても、材料は幅広く、様々な分野で実用部品の期待が高まっています。
セラミックで、従来工法では作れないから駄目と思われていたものができるとなると、潜在的な研究開発が一気に進む。セラミックが持っている特徴、耐熱、耐薬、耐摩耗性や電気特性などと3Dプリンターの利便性・独自性を合わせる事により、実用用途が一気に広がります。
金型などが不要で、セラミック部品製造の可能性を広げ開発コストを半減。
セラミック部品を創る従来工法では、金型などのイニシャル費用や作成時間をかけ、成形し脱脂焼結し加工を加えやっと部品ができあがる。作り直す時には、また金型から作らなければいけない。
航空宇宙産業をはじめとする、大きな開発プロジェクトでは、 複数の開発が並行して動かないといけないんです。ジェットエンジンとかタービンエンジンの開発などはそうですが、並行しながら直列で開発、検証しカット&トライを繰り返します。ひとつひとつの細かい部品、全て検証するわけですが、金型まで修正や作り直しすると膨大な時間とコストがかかってしまうんです。
3Dプリンターを使うと、これらの直列工程を複数部品同時に並列で進めることができる。大きなプロジェクトで中長期の数年かかる開発期間も半減できると思います。セラミック部品で金型などイニシャルが不要で、プロトタイプまで一気に作れるのは、大きなメリットですね。
製品に適合するセラミック材料の調合からオーダーメイド開発。
いま流通している3Dプリンターは、フィギュアを作ったり簡単なプロトモデルを作ったり、食器やマグカップを作る。みたいなことはできます。ただそれらの付加価値は高く無く、用途も限定的なものになります。実際、私たちが樹脂用3Dプリンター事業で得られた実感です。
私たちは、話題性だけの3Dプリンターではなく、製造現場で使われるセラミック3Dプリンターを目指したいと思っていますし、本当に実現しないといけないと感じています。各業界用途で使われるセラミック材には、用途毎に様々な材料が使われます。最終部品の特性を持ち更に、3Dプリンターに最適な材料に調合する必要が有ります。我々エスケーファインはお客様との用途開発を通じ、プロセス開発から装置・材料も合わせ提供して行きたいと思っています。
「何でも作れる」から「こんな実用部品が作れる」を具体的に我々が示さなければ、話題性だけの3Dプリンターで終わります。フィギュアなどのモデリング目的のお客様では無く、イノベーションを起こそうと考えておられるお客様がターゲットと考えています。
いま各産業や各業界からファインセラミックスに大きな期待が寄せられています。電子業界では、高密度化、高出力化が進み、使用用途の広がりによる耐熱、放熱、小型化が必須です。従来素材や工法では限界となりセラミックの特性と3Dプリンターの自由形状に大きく期待されています。
又、医療分野でも歯科や人工骨などは、患者ごとのテーラーメイドの必要性や技能者不足の課題対応に3Dプリンターによる多品種少量の自動化生産が最適とされています。更に環境やエネルギー業界からは効率化を求めた触媒やフィルターで3Dプリンターを利用した研究開発が進められています。
製造コストを抑え、付加価値の高い製品を製造することができれば、業界にとっても大きな利益になると考えています。大量生産で一律的なモノを作るのではなく、高機能で効率の高い製品を作れれば、限りある地球資源を守ることにもつながります。
さらに、超高齢化社会に向け、業界全体で課題となっている技能者不足にも3Dプリンターは力を発揮します。現在での技能者不足は大きな経営課題ですが、今後更に深刻な状況になることが想定されています。
セラミック3Dプリンターが持つ可能性はとても幅広いと感じています。電子部品の機能性向上だけでなく、様々な社会課題とも向き合える。日本では、3Dプリンターなどの新しい工法やシステムを広げて行く為には、規制や従来の概念を乗り越える必要が有ります。海外では3Dプリンターの活用が非常に早く進んでいます。
エスケーファインは先端企業様とも連携し日本のものづくり業界にイノベーションを起こし、社会課題の解決に貢献したいですね。
-
News2015.05.15 FRI 凸版印刷が「燃料電池車」市場に参入する可能性あの凸版印刷が「燃料電池車」市場に参入する可能性があるのをご存じだろうか。
-
Interview2017.07.18 TUE 音声時代の感情解析AI「Empath」が人に寄り添う未来 ー 株式会社Empath 下地さ…Amazon echo、Google Assistant、マイクロソフトのcortana、国内ではL…
-
News2015.06.23 TUE 「画像診断・生体イメージング」市場で特許出願件数の多い大学・研究機関トップ5astavisionが提唱する180の「成長市場」のうち、「画像診断・生体イメージング」市場における…
-
Interview2015.10.19 MON (前編)東京大学 竹内研究室 竹内昌治さん「研究者の好奇心の芽を摘まず、非連続なイノベーシ…匂いに反応するロボット、人の形の三次元細胞、体内埋め込み可能なセンサーなど、「Think Hybri…