2019.04.11 THU 「Makers Future Program~共鳴する、大企業とスタートアップのイノベーション~」イベントレポート——主催:株式会社パソナ 人材紹介事業本部
text by : | 編集部 |
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photo : | 編集部 |
2019年3月2日、DMM.make AKIBA(秋葉原)にて開催された「Makers Future Program」。株式会社パソナが主催する、モノづくりエンジニアの知的欲求を満たし、新しい出会いを作る為のプラットフォームです。
第3回の本イベントでは「~共鳴する、大企業とスタートアップのイノベーション~」と題し、シャープ株式会社と株式会社Cerevoの2社からモノづくりのイノベーションとキャリアについてプレゼンテーションが行なわれました。
共鳴する、大企業とスタートアップのイノベーションーーSession1:シャープ株式会社
今日は大企業とハードウェアスタートアップのイノベーションということでお話しさせていただきます。まず、私の紹介ですけど、色々な研究をしてきた結果、電子レンジはマイクロ波をなくそうじゃないかテレビはブラウン管はいらないな、冷蔵庫はコンプレッサーをなくそうという話と3つ位の大きなテーマに取組んでいました。
ブラウン管を置き換えるアクオスという液晶テレビを作っており、当時は亀山モデルということで一世を風靡した時代がありました。それとマイクロ波ですね。これはヘルシオという水で焼く新しい技術でやってきたということでこの2つはクリアできた。
研究プロジェクトチームに招かれたのは、当時 コンプレッサーを別のエンジンに代えようと考えており、コンプレッサーに対して圧倒的な性能が期待できるスターリングエンジンを冷却デバイスとして使っていこうと考えました。
実際にスターリングエンジンのフリーピストン型を考えたんですが、考えていく中で、コンプレッサーに勝る性能は得ることができました。更に、性能だけでなく新しい冷蔵/冷凍技術により画期的なことができるということで、冷蔵庫の改革ができるよねという話が色々ありましたね。実際に自社の冷蔵庫とかエアコンに載せていこうということで、最初は冷蔵庫、次に自動販売機に載せる開発を進めました。
性能はコンプレッサーより遥かに上だったんですね。ただ、大きな問題だったのはコスト。値段が全く合わなかった。更に、スターリングエンジンを積んだ場合、冷蔵庫の場合は外部熱交換機を変えなければならない。そういうところにも非常にコストがかかる。今市場に売っている冷蔵庫は高くても20万円位だと思うんですけど、当時、採算を出した時そのエンジンを積むと60万円~70万円の冷蔵庫になってしまう。
当時、エアコン向けにトヨタさんや東芝さんとかに相談しに行ったんですけど、トヨタさんは「やったらいい、やりなさい。何故なら値段は下がっていくものだから」と。確かに、ビデオデッキは大昔20万円位で売っていたものが最終的には1万円位になったんですよ。そういう例もあって60万円~70万円の冷蔵庫が20万円位まで落としてくれるんじゃないかということでやりなさいと言われたんですけど、結局 会社の判断ではやめますということだったんです。
その後、シャープが経営危機に陥りまして。それで鴻海グループからの資本参加を受けることになったのですが、ある時、鴻海の社長が来たときに、「シャープはスタートアップと交流やってないよね。なんでやらないの。」という話しがあったんですね。スタートアップやベンチャーと量産をやっていこうと3年前から始めているということで今に至ります。
IoT時代の到来でモノづくりのスタートアップがかなり増えてきました。その人たちが量産のときに壁があるということをヒアリングをするなかで感じました。
量産の手間でスピードをロスしますという話とか、品質、信頼性のトラブルといったケースもあるよということで、プロトタイプを作るまではスタートアップは得意なんですけど、量産の壁までいってしまうとそのための設計や量産ができないということで量産の技術、ノウハウが不足しているということです。
スタートアップのモノづくりでは、量産設計やコスト管理、品質、信頼性の基準設定だったり、部品会社から工場等との連携と、量産を行うには数十社とコミュニケーションをとっていかなければいけませんということが起こってくる。あとはスケジュールですね。これもなかなか上手くいっていないということで、スタートアップには量産化の壁があるということです。
今までスタートアップと一緒になって量産をやっていっているんですが、やはりどの部分もまだまだ理解されていない方が多いので工場とのお付き合いもなかなかしんどいです。そういったところも気を付けていかなければいけないというところで、また不足しているところと感じています。
それで量産化の壁を克服するためにシャープが提供している価値というのはですね、シャープは100年を超えて数多くの商品を量産してお客様の満足を得てきたこと、開発企画から生産販売サービスまで一貫して自社で行ってきたということと、グローバルの競争の中で部品から製品まで生産販売していけるということで、QCDSE、Qは品質、Cはコスト、Dは納期、Sが安全、Eが環境を守って、ブランドを築いてきた。で、最適な工場(社外工場)を選定して、的確なコミュニケーションをして適正な品質、信頼性を確保できます。
予定通りの製造、販売、安定供給ということで全てお客様の満足のためにやっているという知見・ノウハウ、こういうことをシャープが提供していくことによってスタートアップにメリットが出てくるのではないのかと思います。
そこで、量産化の壁を克服するためにIoT.make Bootcampというものを考えました。IoT.make Bootcampというのはモノづくりスタートアップ向けのアクセラレーションプログラムで当プログラムは「モノづくりブートキャンプ」と「量産アクセラレーションプログラム」の2構成になっています。
さらに、シャープのイノベーションパートナープログラム、「SHIP」というプログラムを今作っています。実際はもう出来ているんですけど、スタートアップと密にコミュニケーションをとっていきましょうという内容で、別に先程言ったプログラムを受けて下さいという話ではありません。
「モノづくりブートキャンプ」や「量産アクセラレーションプログラム」を受ける前にシャープと垣根の無いコミュニケーションをとって、本当にシャープであって大丈夫ですかとか、僕等が考えている支援してほしい内容ってこんなものだけど大丈夫ですかとか、色々な話をしたいねということでSHIPというプログラムを作りました。
皆さんの中でスタートアップの方がいらっしゃるなら、どなたでも入れるので、困り事とかメンタリングに近い内容でもいいですし、色々話をしていきましょう。シャープは常にスタートアップと交流を深めていこうということをやっているので、皆さん、是非参加してください。
共鳴する、大企業とスタートアップのイノベーションーーSession2:株式会社Cerevo
まず、Cerevo(セレボ)という会社をご存じない方もいらっしゃるんじゃないかと思いますので、会社説明から先に入らさせていただきます。Cerevoという会社の名前はコンシューマ・エレクトロニクス・レボリューション。要するに家電の世界に何か革命を起こそうと立ち上げた会社です。
今までに作った製品ですが30以上の製品を開発・販売しています。そのどれもが量産に入っていて、プロトタイプで終わったものほとんどありません。製品郡としては第一にライブ配信製品、デジタルカメラと組み合わせるだけで細かい設定が必要なくYouTubeやニコ生などにそのままストリーミング配信ができるものです。
もう2つ目はスマート・トイで、アニメの中にある世界、例えばテレビアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」の中に出てくるDOMINATORというガン(銃)であったり、攻殻機動隊S.A.C.に出てくるタチコマというロボットを1/8サイズでそのまま具現化しています。
スマート・ホームカテゴリとしてはは色々ありますが、Wi-Fiを搭載した鍵型のスイッチや、Tipronという自走式のプロジェクターロボット、またGoogleカレンダーと連携する目覚ましアラームがあり、これは二度寝防止のためにシェイクしないと止まらないというものです。今まで80以上の国と地域に販売しています。日本だけではなく基本的に世界中に売るというスタイルをとっています。
Cerevoは割と最初の頃からCES(コンシューマエレクトロニクスショー)というラスベガスで毎年1月に4日間ほど、開催されている世界的な家電見本市があるのですが、そこに毎年出展しています。2017年はLumigent(ルミジェント)という音声操作が可能なスタンドライトを出展し、CES Innovation Awardsを取っています。
2018年4月から前任の岩佐から私に代表が変わり、セカンドシーズンということで、次のステージに移行しようというかたちで体制変更しました。Cerevo は2008年からハードウェアベンチャーとして製品を企画開発してきましたが、企画開発、物流、広報、営業、自社製品を売るなかで、一連の現場ノウハウは全て社内に溜まっている状態です。
このCerevoの持つノウハウを外に共有したいと考えています。基本的にスタートアップをはじめ企業の新製品開発において、企画があって、原材料の選別や試作を行なって、それを踏まえて量産にもっていくのかどうかをマーケティングも含めて考えるわけですが、それをCerevoは自社のみで10年間やってきています。その知見を周りに全て解放しようという方に動いています。
Cerevoはハードウェア・スタートアップとしては様々な製品を出してきたというのがあるので、ノウハウを業界に還元して、ハードウェア・スタートアップを盛り上げるべく環境を変えていこうと考えています。
僕はもともとはエンジニアですが、モノは無闇に作らない方がいいと思ってます。モノを作るためにはコストが掛かります。コストがいくら掛かったとしても、モノが存在する以上それは最終的にゴミになります。
だけどサービスというのはその場で消せます。そしてサービスは毎日お金が入ってきます。ハードウェアは売った時にしかお金が入ってきません。なので、それを踏まえてサービス設計を考えプロダクトを作ろうということです。
何を作るのかというと要するに最初の0から1ですね。0から1を作るにはまず何を作るのか。要は製品企画のことなんですけど、企画というのは社員が持っていることが多いと僕は思っています。要するに個人ですね。個人が沢山アイディアを持っている。グループで持つものではないと思っています。だから、そのアイディアを活かして作るというのはあります。
先ほどお話した目覚ましアラーム「cloudiss(クラウディス)」は、以前の代表・岩佐が朝起きられず会社のMTGに遅れる事態などがありました。それを防ぐためにはどんな目覚ましがあればいいのかを考えて、Googleカレンダーと同期してアラームが鳴るという製品を作りました。スマートフォンでGoogleカレンダーと同期してアラームをセットしてくれるアプリはありますが、それをあえて製品化したのは「スマートフォンでは充電切れでアラームをセットしても気付かない」「音だけではなく、身体を動かして強制的に起こす」といったアラームを作ろうという発想です。
またCerevoで展開している「S2Rシリーズ」は「From screen to the real world」としてアニメやゲーム、映画などの作品中に登場するアイテムを、家電のテクノロジーを用いて現実世界に可能な限り再現するCerevoのプロジェクトです。カテゴリ的にはスマート・トイと呼んでいます。テレビアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」に出てくるDOMINATORやアニメ「攻殻機動隊 S.A.C.」に登場する多脚戦車タチコマの1/8モデルを出しています。
MKZ4は改造ミニ四駆製作キットです。スマートフォンと連携して前に行ったり横に行ったりと操作が可能になります。ミニ四駆って基本的に真っ直ぐにしか行かないんですけどこれはバックしたり曲がったりもできます。ワークショップなどを通して親子で基板にはんだ付けしてもらって、組み立ててもらって、アプリ入れてもらって、皆で遊ぼうというような会とかをしています。キット単体でも販売を行なっています。
今時のエンジニアのキャリア形成は一本ではできないと考えています。ソフトウェアでも、アプリケーションサイドでも、根幹としてベースでちゃんとできることがありつつ、他の領域のことも見ることができないと駄目かなという気はします。
これはメカも一緒で、メカエンジニアだからエレキは分からないとしてしまうと、領域がせばまり設計の遅れに繋がります。例えば、トルク計りますというとき、計算上アームにはこれだけのトルクがかかります、これぐらいでしなります、ということをやったとしても、後はエレキが考えろよ、モーター見つけてこい、スタッフ見つけてこいと人任せでは、どんどん遅れていきます。全然スピード感が出ません。
部品を選定するためには市場にあるものを選ぶのか、一から作るのかどちらかしかないんです。そのときに市場にあるものから選ぶ設計というのは正しいんじゃないかと僕は思っています。一から設計すると検証だったり、テストだったり色々あって、それがモノになるまで凄く時間が掛かります。
例えば、サーフモーターでも市場にあるものが選べるなら凄く楽になります。それは既に単品では検証が終わっていて市場にあるものです。メカの世界ではそうなんですけど、エレキの世界でも一緒で、エレキの世界も割と市場にあるものから選んでいます。
半導体は、世界の半導体メーカーの中からデータシート上から選びます。これはエレキの世界では割と普通に行なわれています。だけど、メカの世界というのは一から設計することが殆どで、市場にあるものを使わないので、凄く時間が掛かります。それを少しづつ変えていって、市場にあるものをベースにモノを組み立てていくというのは正しいのではないかなという気はします。
勿論、メカとして一から開発した方がサービス設計として正しくて、サービスとして儲かるよというのであれば作るべきだと僕は思うんですけど、モノを作りたいから作るのではなくて、サービスで儲かるというベースがあるべきだと僕は思っています。
創立から10年、このビルの11階にオフィスフロアがあります。Cerevoにご相談を頂ければ一緒に面白い挑戦ができるんじゃないかなと思います。
ありがとうございました。
共鳴する、大企業とスタートアップのイノベーションーー株式会社パソナ 人材紹介事業本部
ハードウェア開発トータルでサポートする総合型のモノづくり施設であるDMM.makeAKIBA。
「モノを作りたい人が必要とする、全てを。」というキャッチコピーであり、「全て」のなかの新しい「ヒト」の繋がりをパソナとして提供したくスポンサーをさせて頂きました。
勿論、スタートアップの企業が課題となる採用支援や課題解決手法のご提案をさせて頂きます。加えて、モノづくりに携わるMakersが活き活きと輝く未来のために、知的欲求を満たす、将来の不安を解消する、仲間と語る、キャリアを開発する新しい場の提供をDMM.make AKIBAと一緒にさせて頂きます。
パソナの仕事は「人を活かす」こと。最先端のモノづくり施設DMM.make AKIBAに集うMakersの未来の働き方を一緒に考えていきます。
先程、青木社長も仰っておりましたけど、色々な方から交流の中でノウハウを付けていただくというのは凄く有益なことだと思うので交流を図っていただき、山上様も青木様にも気軽にご質問いただければと思います。
改めて、今回パソナの企画にご参加いただきましてありがとうございました。
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