2020.02.07 FRI エネルギーの「地産地消」を技術で支援する。 ——大日機械工業株式会社 鳥巢 秀幸
text by : | 編集部 |
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photo : | 編集部 |
2011年の東日本大震災以降、エネルギーの在り方について考えるようになった方も多いのではないでしょうか。京都議定書やCOP(気候変動枠組条約締約国会議)で定められている「CO2削減目標」を挙げるまでもなく、低炭素社会の実現や再生可能エネルギーの活用は世界的な潮流だといえます。
こうした潮流を踏まえ、10年以上前から水素エネルギーや再生可能エネルギー利用に取り組んできた企業があります。確かな技術を基に、現在も様々な企業とエネルギー・環境の先端技術に取り組む、大日機械工業株式会社代表の鳥巢さんにお話を伺いました。
10年以上前から水素製造装置開発に携わる「大日機械工業株式会社」とは
当社は1965年創業なので、今年が54期目(2019年取材当時)という会社です。もともと原発関係の仕事を大手メーカーから受託する仕事が多く、「一品もの」と呼ばれる専用の機械装置や検査ロボットのエンジニアリングおよび製造、あるいは電磁誘導法による非破壊検査装置の開発を手掛けておりました。
そうした中、さまざまなメーカー様との付き合いが深くなり、その流れで1980年ごろからエネファームのための小型の燃焼器などを開発したり、リン酸型燃料電池用の水素製造装置を開発し、水素ステーション利用の発展に関わるようになってきました。
2013年度には、初の大型プラントであるISプロセス・連続水素製造試験設備(JAEA)を完成させ、これらの技術・実績をベースに、現在は燃料電池自動車(FCV)の普及に欠かせない、水素ステーション用の水素製造装置(NEDO)の開発を終え、引き続き実証実験に取り組んでいます。直近では秋田県能代市で風力発電により水素を製造し、都市ガスに近似したガスに混合。同混合ガスをガス配管により隣接地に設置した利用場所へ供給し、市販ガス機器において実際に使用するという実証実験(環境省、NTTデータ経営研究所)を二年計画で実施しております。
2011年の震災がもたらした転機。培った実績を基にチャンスへ
2011年の東日本大震災は大きな転機でした。当社は横浜が本社ですので、どうしても東京や神奈川のお客様がメインとなります。少し専門的な話になりますが、原子力発電所の炉のタイプでは東日本はBWR(沸騰水型)が多く、西日本はPWR(加圧水型)多い傾向があり、現在再稼働しているタイプはPWRのみです。当然、今まで来ていた仕事も減少傾向となり、水素や再生可能エネルギー利用等、原子力関連事業以外の領域を強化してゆくことになりました。ここ数年の当社の売上比率でいくと、6割から7割くらいが再生可能エネルギーを含んだ領域の仕事になっていますね。
もちろん、原子力関連事業で培われた強みも多くあります。その一つが「品質の高さ」だと思います。当社は2008年にISO9001、さらに2015年には最新の基準の移行審査に合格しています。原発関係の仕事ですと、必ず品質保証体制についてヒアリングを受けるのですが、この厳しい基準を取得していることで通じる部分がありますし、大手メーカーが毎年行う取引先の外部監査に関してもISO9001を取得していることで信頼を得られている部分が大きいですね。それは、現在の水素・再生可能エネルギー利用のエンジニアリング業務を受注していく際においても、充分に活かされていると思います。
水素・再生可能エネルギー利用に関する先端技術を続々とプロトタイピング
これまで水素・再生可能エネルギー利用に関する実績を細かく積み上げていく中で、JAEA(日本原子力研究開発機構)、産総研(産業技術総合研究所)、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)、環境省などとも水素製造やアンモニア合成に係る実績が増えてきました。
最近は、それらの実績を踏まえた数社の大学ベンチャーからも引き合いが続いております。
これらの会社に共通するのは、それぞれベンチャーということもあるのですが、何十億という予算もなく、しっかりとした技術を持っていれば大手企業と組まなくても良いと思っているということが言えるかもしれません。また、大手と組むと権利関係の問題などもあり組みづらいというのも背景にあるようです。逆に当社のような規模の会社だと柔軟性もあり、一緒に取り組みやすいという判断のようですね。
エネルギーの「地産地消」へ。それを実現する手助けをしたい。
現在、電力供給はそれぞれの地域の電力各社から分配される形で行われています。いっぽう、当社が現在進めている秋田県能代市のプロジェクトでは、秋田県産の天然ガスを活用しています。天然ガス自体は量が不安定でカロリーが高すぎて使いづらいのですが、そこに水の電気分解を行って水素を発生させ、同ガスに水素を混合させ13Aの都市ガス相当のガスを生成します。それをモデルハウスで家庭用のコンロ・給湯器などで使ってもらうという実証実験です。
これは何を意味しているかというと、従来の電力会社から一括で分配される電力の在り方ではなく、その土地に応じた特徴を使って自己完結的にエネルギーを賄おう、という試みのプロジェクトであるということです。秋田県はたまたま油田があるので天然ガスでしたが、地域によっては風車や太陽光、地熱でもいいと思います。それらを活用して自分たちで賄っていくというのが将来のエネルギーの姿ではないかと思っています。そうすればリスクを分散できますし、有事の際にブラックアウトなども起こりづらくなります。昨今の度重なる自然災害の状況からも今後は小規模分散型でかつ低炭素なエネルギーのあり方を模索するべきではないでしょうか。
当社は、そのような流れの中で、エネルギーの地産地消に関わる先進技術の実現に向けて、大手と比べて柔軟に、同等の高品質で対応できる独自のポジションを築いていければ良いなと考えています。
出典:環境省ホームページ(https://www.env.go.jp/press/106873.html)
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