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Interview

コインチェック株式会社 COO 大塚雄介さん「日本は、世界でトップクラスの仮想通貨大国になると思います。 」

text by : 編集部
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「フィンテック」が急速に浸透している。三菱東京UFJ銀行が独自の仮想通貨の実証実験を開始、ビックカメラはビットコインでの決済を試験的に導入、三井住友海上火災保険は仮想通貨でのトラブルに対応した保険を売り出した。急激な社会実装が進む仮想通貨。国内最大級の仮想通貨取引所を提供するコインチェック株式会社COO大塚さんにお話を聞きました。


■仮想通貨には、飛躍的な成長に必要な3つの条件が揃っていた


―CEOの和田さんと仮想通貨ビジネスを立ち上げた背景を教えてください。

元々はレジュプレスという会社で、STORYS.JPというサービスを運営していまして、「ビリギャル」などの人気コンテンツが誕生したりもしていたんです。

当時から、この会社の強みは、和田自身及びチームの開発力だなと感じていまして、その開発力をSTORYS.JPだけに注力するのは、経営資源の最適化か?と考えた時、その判断は手堅いだろうけどより飛躍的な成長をする他の方法もあると考えていました。

そこで和田と各自でアイデアを持ち寄り、様々なアイデアを検討した結果「仮想通貨のビジネスをやろう」という結論になりました。

 

―飛躍的な成長のために、仮想通貨。

はい、当時、レジュプレスを創業して2年経ち、2年間で学んだことの1つに、飛躍的に成長する事業には“3つの十分条件”があるということでした。

1つ目は「技術革新」が起こること。今回の場合はブロックチェーンです。「技術革新」は、非連続的で、新しい技術がこれまでの産業構造そのものを変革します。俗にいうパラダイムシフトを起こす「技術革新」です。

2つ目に「法律の変更」。「法律の変更」は、ビジネスルールを根底から変更します。仮想通貨に関しては、当時は法的な日本の見解は、「通貨でも物でもない価値記録」という新しい概念で整理することが自民党IT戦略特命委員会で規定されていました。懸念点はゼロではないけど、見通しは悪くないぞと思っていました。

3つ目は「プラットフォームの大きな変化」です、iPhoneの普及やVRの登場がこれに当てはまります。同じコンテンツを新しいプラットフォームに最適化しサービスを提供することで飛躍的に成長する事業になります。例えば、LINEやソーシャルゲームなどが、この条件の代表例です。

 

―仮想通貨はそれらを満たしていた。

そうです。STORYS.JPをやった経験から、この3つが交差点が最も大事だという意識が2人の中にありました。
その意識の中で「もっと簡単に(インターネット的に)お金のやりとりをする時代が来るはず」と考え、そのための一番いい手法で既に成長していたのがビットコインでしたので、仮想通貨の事業を始めようということになりました。

 

―しかし当時は今以上にビットコイン自体が世の中に受け入れられて無かった気が

そうですね。周囲も7割方は「やめておけ」という反対意見でした。うちの家族が「あなたの家族がやろうとしてるサービスの話聞いたけど、なんだか危ないわよ。捕まるかもよ」と知人から忠告されたりもしましたね。

 

―どちらかといえばそういう風潮でしたよね。

調べれば当然法律とかシステム面とか、「やらないほうがいい、大変そうな」理由が出てきます。
投資家にも反対されました。でも最終的にそういう声を全部無視したんです(笑)

 

―全部無視ですか(笑)

世間的な印象は懐疑的でしたが、一方で実際の流通量や取引所の数など数値面は確実に市場が伸びてました。
本当にダメならその時やめればいい。やりたいからまずはやる。僕も和田もそういうタイプだったので
「よし、周囲の声は無視してやるぞ」と

 

―コインチェックが日本最大級の取引所になれた理由をどう考えていますか。

コインチェックって、仮想通貨の取引所としては国内でも後発で、2014年8月開始なんです。、
これは構造上の考えですが、「取引所」って極論を言ってしまうと、機能や技術の差別化が難しい。
技術的には、極論だれでも作れるんです。

すると競合との差別化できるポイントは限られます。
例えば手数料、日本の市場では差はなくなってきています。
あとは、ユーザーの体験性。「あのサービス使いやすいよね。だから使う」

このユーザーの体験性を磨くために、開発もCS対応もすべてのリソースを割いたから、かなと。

 

―でも他のサービスがユーザーをないがしろにしているわけでもないですよ。

もちろんそうです。
でも例えば「ビットコインで世界一目指します」って株主に説明して、その目標を意識すればどこかでユーザーが置き去りになります。

これは社内でも同様で、メンバーには「俺や和田の顔色を見るな」と言います。
僕らも始めた時点で投資家の忠告を無視しています。(笑)
ユーザーがサービスを受け入れるなら、経営陣や株主は異論が無いはずです。

 

―なるほど

なんのため仕事してるの?っていったらユーザーのため。
ユーザーの言いなりになるのではなく、自分で仮説を立てて実行して、結果的にいいサービスを提供して伸びればあとはどうにかなります。

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※コインチェックのトップページ。ユーザー登録の簡単さや取引手数料、購入できる価格の明記など、シンプルながらわかりやすい訴求がされている。

 


■いま仮想通貨やビットコインには、不可逆な重力が生じている。


―知人に「やめておけ」「捕まるぞ」とまで言われる状況から約4年経って、変化は感じてますか?

一番感じるのは、仮想通貨やビットコインというのはある種の「重力」が掛かった状態になったと思います。
仮想通貨が起こす変化に重力が生じて、それに世の中が引っ張られて逆らうことができない規模になっている。

 

―不可逆だと

はい、以前言われてたような「仮想通貨の仕組みには欠点がある」「だから世の中のスタンダードにはならない」とか、もちろん未だに欠点はありますが、みんながそれを「どんどん改善しよう!」と動いていて、抗おうが仮想通貨が当たり前の世界に向かっていってるなと。

 

―仮想通貨の現状の規模感というのは

流通量の多いビットコインに限ると、確か全世界で2兆円、そのうち40%が日本と言われてるので国内で8,000億円くらいじゃないでしょうか。

 

―今後、どれくらいのペースで拡大するんでしょうか。

たしか、ざっくりと国内で仮想通貨を所持してるのが60万人くらいいるはずで。
比較対象としてFXをやる人が国内で600万人前後、ちょうど10倍です。
FXよりも利用シーンの多さやハードルの低さを考えれば、確実にこの「10倍以上」にはなると思います。

 

―近年、大手企業もビットコインや仮想通貨のビジネスに関するトピックを聞くようになりましたが

そうですね、うちにもいろんな会社さんから打診がきますね。
「相談したい」と連絡いただければまずはお会いさせていただいております。

 

―どういう相談が多いんですか

本当に様々です。

「なんとなくブロックチェーンやりたい」と言われることもあったり(笑)
一方で国際的な送金事業とかは、既存の課題・不便を解決する可能性があるので、意欲的にお話を聞いたりします。

 

―一緒に話をしていて、意欲的になるかどうかのポイントは

「熱意」と「顧客の課題」ですね。
熱意は、大手企業であれば仮想通貨やブロックチェーンなど新しい概念をしっかり理解し、会社の経営陣にも理解してもらうための粘り強さが必要になります。これは超人的な熱意をその担当の方が持っていないといけない。

 

顧客の課題というのは、例えば「上司から言われたのでなんかブロックチェーンでやりたい」って話には、顧客が不在じゃないですか。
でも「国境を跨いで送金できるように」とか「不動産の売買に使えないか?」には、両替の煩雑さや面倒な手続きといった「顧客の悩みや利便性」の話がちゃんと含まれています。

ですから、この熱意と顧客の課題解決というポイントが明確な企業の方とお話できたらと思っております。

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※エントランスに置かれていた、ブロックチェーンやビットコインについて解説した大塚さん自身の著書。

 


■日本は仮想通貨大国かもしれない


―日本最大ってことは、国内のみならず海外の企業とも話をする機会が多そうですね。

ええ、中国でNO.1の取引所のCEOや、グーグルから出資をうけたRippleの会長とか。
色々なお話をさせて頂く機会があります。

 

―海外の方と話してると、日本の仮想通貨における課題を肌で感じたりますか?

いや課題というか、むしろ日本というマーケットでの可能性を肌で感じます。
日本って、世界的に見ても指折りの「仮想通貨大国」になるんじゃないか、って。

 

―なぜですか?

日本は、世界に先駆けて法律を可決しました。
昨年5月に可決した「改正資金決済法」 (リンク先:金融庁作成PDFファイル)

仮想通貨を明確に法律で定義をし、登録制にし規制も明確にしました。これが非常に意味があります。

 

―他の国はどうなんですか?

ニューヨーク州にNYDFSという金融局が取り決めたルールがあります。でもこれ厳しすぎて事業者がみんな出ていってしまいます。アメリカ全体でもテロ資金に厳しい国なので、凄く取り締まるので僕らも前向きに展開を検討できないほどです。

中国は共産主義なので、もしある日国全体で規制されたら取引所は閉鎖されちゃう。いち民間企業としてリスクが大きい。
他の国も「決めねば」と言いながらふわふわした状況の国が多い。

 

―日本は明確な法があり、市場も大きい

そうです、世界に先駆けた法律があり、遵法の精神のもとに事業を展開できる。
そして法律が明確になると上場企業・大企業も、投資家も安心して手を出せる。

 

―そういえばリクルートさんと提携されてましたね

はい、彼らがもつ26万店舗に一気にビットコイン決済が案内されます。これはさすがに自力では難しい。
海外の事業者も、日本を「魅力的な市場だ」とみているなと感じますよ。

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※今年4月に発表されたリクルートライフスタイル社「Airレジ」との提携。全国のお店でビットコイン決済ができることは、決済の簡単さだけでなく仮想通貨が生活の中で身近になる流れにおいて大きな意義があると言える。(コインチェック社ウェブサイトより抜粋)

 


■仮想通貨が、インフラ化しつつある


―法整備面で日本が魅力なのは理解したのですが、ユーザーはどうですか

日本って、世の中のイメージよりも「リスクマネー」の土壌がある国だと思うんです。
GMOさんやDMMさんたちがFXサービスを展開してますが、日本のFX市場規模は、世界最大規模です。

 

―なぜですかね、貯蓄が好きでリスクを冒さない。というイメージでした。

なんだかんだで、日本は教育水準が高くてある程度自由に出来るお金を持った中間層が多いんだと思います。
他の国と比べると、医療や保険の制度もしっかりしていて失業手当もある。

もしかするとマインドは「慎重」な人も多いかもしれませんが、社会的な基盤としてリスクマネーに回す余裕のある人が多い国なのかも、というのはユーザーさんの動きを見ていて感じますね。

 

―日本で仮想通貨が便利に使えたら、2020年のオリンピックで海外の人も「日本は進んでるな」って感じてもらえるかもしれないですね

そうそう、良くも悪くも3年後にそうやって海外の方が沢山日本に訪れます。国としてもそれまでに「スマートな支払いが出来る国」というのを普及させたい流れがあります。

特に短期滞在であれば、通貨の両替が不要になり利便性が明確ですから。
そこに向けて、国としてどうすべきか「意見を述べてほしい」と言われたりもするんです。

 

―それはいい流れですね

いや、僕らが言ったことが仮想通貨全体に対して何か影響を及ぼす可能性もあり得るので、責任の重さを感じています。

流通量もユーザー数もどんどん規模が大きくなっていますから、本当にみなさんにとっての「インフラ」を担ってるんだという意識が日に日に強くなりますね。

 

―メンバーも増えましたよね

社内メンバーだといま25人くらいですね。

 

―コインチェックで働くメンバーの傾向とか、理念みたいなものはありますか

コンセプトとして「健全な向上心を持っているか」というのがあります。

 

―健全な向上心とは?

健全じゃない向上心は、金儲けに走り過ぎたり、自分本位で欲求のために人を蹴落としたりという行動に繋がります。
一方で立身出世を考えたり、もっとこの状況をよくしたいという向上心が無ければ自発的に動けない。

 

―その2つのバランス

西郷隆盛の好きな言葉に「功のあった人には禄を与え、能力のある人には位を与えよ」というのがあります。
結果を出した人にもちゃんと報いる。でもそれは報酬(禄)でいい。
でも人を導く立場になるには、「人徳」が大きくなければいけない、徳のある人には昇進させたり権限を与える。

そうやって健全な向上心を持ってる人に、自由にやってもらうのがいい。
会社に在籍しているあいだ、身に着けたいスキル、キャリア、それを仕事を通じて得てもらう。

だから定期的に話をして、「今年も一緒に頑張ろう!」なら一緒にやればいい。
でも長期的には事業も変化するし、その人自身も成長する中で思うことが変わります。

元々僕と和田が、周囲が「やめとけと」って言ったのに「やりたいからやる」で始めた事業ですから、細かいところまでメンバー1人1人に無理強いする気はありません。

自分なりの夢、実現したいこと、そういう健全な向上心をもってる人と、一緒に事業を大きくしていきたいですね

 


大塚雄介 コインチェック株式会社 取締役COO
早稲田大学大学院卒業 物理学修士号取得。専攻は量子理論力学。2006年 元リクルート系企業(株式会社ネクスウェイ)で法人向け新規事業開発ならびにサービス開発を9年経験。年間売上12億の新規事業をゼロから立ち上げ全社VP賞を2度受賞。事業アライアンス・広報・マーケティング・ビジネス面を担当。

インタビュー:波多野智也(アスタミューゼ株式会社)

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