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東京大学・明治大学・早稲田大学のイノベーターたちが注目する市場・企業・人物とは?~DCEXPO 2015 レポート~

text by : 編集部
photo   : 編集部

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10月22日から25日までの4日間、日本科学未来館で開催された「DIGITAL CONTENT EXPO(DCEXPO)2015」。大企業やベンチャー企業による展示のほか、大学の研究室による、研究成果を「見せる」「伝える」ことに工夫を凝らしたデモンストレーションが注目を集めていた。

そこでastavisionでは「DCEXPO 2015」に出展している大学研究室で、先端技術の研究に取り組むイノベーターたちが、どのような市場や技術、企業、人物に注目しているのか、話を聞いてみた。


 

松久 直司さん(東京大学大学院 工学系研究科 電気系工学専攻 博士課程)

松久さん

松久さんが所属する東京大学工学系研究科 染谷研究室「布地に印刷で作る伸縮性節電センサー」を出展し、Innovative Technologies 2015 特別賞を「Industry」と「Human」の2部門で受賞した。

astavision「生体情報デバイス・バイオセンサ」市場コンテンツでも取り上げた薄膜トランジスタセンサが話題になった染谷研究室だが、その薄膜トランジスタセンサに伸縮性のある配線ができれば、「伸びるセンサ」が出来るのではないか、と開発を進めていたという。

「昔はゴムにカーボンチューブを入れて伸縮性導体を開発していましたが、もっと電気を流したいとか、安価で手に入りやすい材料で作ろうと考えた結果、銀・ゴム・界面活性剤・有機溶媒の4つを混ぜてインクを作るといい導体が出来る、というところにたどり着きました。薄膜トランジスタと組み合わせて伸びる回路というのも作っていますが、今回はテキスタイルという見えやすくわかりやすい形で展示しています」(松久さん)

―あなたの注目している市場は?

バイオヘルスケアです。特にリハビリなどの分野で私たちの技術が活用できると考えています。
ファッションの分野も魅力的なのですが、テキスタイルの上に回路を作るとなると、導電糸を使うという方法を採られることのほうが多いのかなという気がします。導電糸も良いものがありますが、服地に縫い付けるのは大変です。インクであれば、一度マスクを作ってしまえばあとは印刷するだけなので、低コストですし、着心地も損なわないのではないでしょうか。

―注目している人物は?

もともとイリノイ大学の教授で、最近ノースウェスタン大学に移られたJohn A. Rogers先生です。われわれが薄膜トランジスタ、有機半導体で作っているようなものを、シリコンをゴムの上に上手く並べることで作り、バイオセンサとして活用しています。

 

なお、三菱製紙出身で、今年8月から染谷研究室にジョインした伊藤章さん(特任研究員・工学博士)によると、研究室からスピンアウトしたベンチャー企業が11月から始動するという。モーションセンサーに関する事業を手始めに、順次新しい研究を事業化していく予定だ。


 

上野佳奈子さん(明治大学 理工学部 建築学科 専任准教授 工学博士)

上野さん

東京電機大学・九州大学・明治大学・NICTの共同出展である「没入型聴覚ディスプレイシステム『音響樽』」は、室内に設置した96個のスピーカを駆動することで、音の三次元波面を厳密に再現できる装置だ。東京電機大学がハードウェア開発、九州大学が音源・データベース制作、NICTが音波の再現技術を担当する中で、明治大学は、音がそれを聴く人間に心理的・生理的な面でどういった効果を与えるか、という評価の部分を担当した。

「原理的には樽という形でなくてもいいのですが、こういった場所で展示することを考えて、組み立てや解体、持ち運びしやすいものを考えたときに、樽という形になりました」(上野さん)

―あなたの注目している市場・企業は?

大企業というよりも、クリエイターの方たちと、小さくつながってフットワーク良く動ければと思っています。最近では、実録の環境音に音楽や絵本の朗読を重ねたり、立体的な音楽と視覚効果と組み合わせたり、クリエイターの方々と共同して作品の制作を始めています。

音が人に与える影響、という観点で言うと、音と心拍数や発汗などの関係からパーソナルスペースを測る、といったこともできますので、サイエンスの基礎的な研究に使うという用途も考えられます。他にも、視覚障がいを持つ方の支援や、ゲームなどに活用できるのではないかと考えています。

―あなたの注目している人物は?

もともと音楽を演奏する方や、コンテンツを作るクリエイター、デザイナーの方に使っていただくことを目指していますので、芸術系の方々には注目しています。特にクラシックの演奏家の方には、コンサートホールの客席では自分の演奏がどう聞こえているか、というフィードバックが得られるので、楽器の評価などにも活用していただけると思います。


 

■小池宇織さん(早稲田大学 先進理工学部 応用物理学科 橋本周司研究室 修士課程)

小池さん

小池さんの所属する早稲田大学 先進理工学部 橋本研究室では、「ペーパーメカトロニクス:印刷で作るロボット」を出展している。「ペーパーメカトロニクス」は、印刷した紙が自律的に折れ曲がることを利用してロボットの構造を組み立てるプリンテッドロボティクスと、紙面上に電子デバイスを作製するペーパーエレクトロニクスを融合した新しい研究分野だ。

「金属のような硬い素材ではなく、人体に近い柔らかな素材を使ったソフトロボットというジャンルがあるのですが、そこから紙で作ってもいいんじゃないか、という発想が生まれました。インクジェットプリンタを用いて紙に水を塗布し、水分が蒸発する際の乾燥収縮で変形させています。また、動きを付けるためには熱アクチュエータを使用しており、紙の上に導電性のインクを印刷、その上に樹脂を塗布するという方法で実現しています」(小池さん)

―あなたが注目している市場は?

印刷とケミカルの分野です。
いまは電線で電気を補給していますが、ゆくゆくは電池も紙面上に印刷してしまいたいと思っています。また、樹脂を使えるプリンタが出来れば、プリンタ1台でロボットを完成させることができます。雑誌のとじ込み付録などで、家庭用のプリンターで印刷すると組み上がるようなものが出来れば面白いのではないでしょうか。

また、紙は使い捨てが出来るので、たとえば医療など、使い捨てできることを活かせる分野には関心があります。

―あなたが注目している企業は?

Googleは莫大な予算で研究開発に取り組んでいるので注目しています。私たちの研究も、クラウドファンディングなどを使って形にしていければと思っています。


 

astavisionでは今後、「フレキシブルデバイス・有機エレクトロニクス」「仮想現実(AR・VR・SR・MR)・3D投影」「クラウドファンディング」などの市場コンテンツを公開予定。

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