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ロボットが変える未来の物流~MUJIN・GROUND 第1回 ロボデックス 講演レポート~

text by : 編集部
photo   : ロボデックス事務局提供

1月18日から20日までの3日間、東京ビッグサイトで開催された『第1回 ロボデックス』。産業用・サービスロボットから、ロボットの開発技術、IT、AI技術までロボット社会の実現を促進するあらゆる技術が集まり、第1回の開催から137社が参加し、3日間で16,304人を集める盛況となった。

イベント中、多数開催されたカンファレンスの中から、注目の物流ベンチャーであるGROUND株式会社と株式会社MUJINによる講演内容を紹介する。


 

■ロボットと物流

GROUND株式会社
代表取締役社長 宮田 啓友氏

ground

アスクル、楽天などを経て2015年4月にGROUNDを設立した宮田氏は冒頭、「今年は物流ロボット元年」と述べ、イーコマース市場の成長と物流事情に触れた。
「現在、イーコマース市場のグローバル市場規模は約210兆円と言われ、2020年にはほぼ倍になると見られています。また、国内も約15兆円の市場があると見られ、人手不足は深刻化する一方です」

また、イーコマース特有の事象・要件によって物流センターの高度化複雑化が増していることについて、予測困難な商品ライフサイクルに言及した。

「楽天の2015年の年間売り上げが約2兆7000億円であるのに対し、中国のアリババは2016年11月11日の『独身の日』にたった1日で約1.8兆円を売り上げ、過去最高を記録しました。また、アメリカのサイバーマンデー(アメリカでは11月の第4木曜日が感謝祭であり、感謝祭休暇明けの月曜日にECの売上が急増することから、この日はサイバーマンデーと呼ばれている)では通常の6~7倍の売り上げがあり、夜の19時から24時がピークとなっています。このような激しい物流変動や異なる消費時間に対応していくには、従来のシステムでは限界が来ており、ロボットをはじめとする新しいテクノロジーが必要になっています。私がフランスにいたころはポーランドからの移民が現場を支えていましたが、移民政策をとっていない日本では、より一層テクノロジーの力が必要になります」

そのような環境下で、GROUNDはインドのベンチャー企業GREYORANGE社が開発した自動搬送ロボットシステム「バトラー(Butler)」を日本向けにローカライズした。

「GREYORANGEは社内がソフトウェアのチームとハードウェアのチームで分かれているユニークな会社です。現在、物流センターで行われているようなマニュアルピッキングには一日10キロの歩行を伴いますが、バトラーを使えば作業者は所定のステーションを離れることなく搬入とピッキングができるため、単位当たりの出荷能力の最大化に寄与することができます。たとえば、棚入れ作業に15名、ピッキングに35名の人員が必要だったのを、それぞれ4名、6名までに減らすといったことが可能になります。また、これまでは物流センターの建設と同時に設備を作り、固定した形で運用してきましたが、バトラーの場合は物量の増加に伴い、1台単位で増やすことができます。」

最後に、物流の将来とインテリジェントロジスティクスについて、「物流オペレーションはロボットを中心とした装置産業へ向かう」という展望を示した。

「ウォルマートが3年間で3000億円の投資をして物流センターを開発することを発表し、アマゾンは全世界で4万5000台のロボットを導入する中で、物流オペレーションはロボットを中心とした装置産業へと向かい、人とのハイブリッドなオペレーションを築いていくことが課題になっていきます。GROUNDはDigital Inbound Square(DIS:クラウド型入荷管理ソフトウェア・コラボレーションウェア)というオープンプラットフォームを提供しており、様々な企業と提携することで海外展開を図っていきたいと考えています」

 
■MUJINコントローラが実現するロボット市場拡大と業界エコシステム
~MUJINの真の狙いとは~

株式会社MUJIN
CEO 兼 共同創業者 滝野 一征氏

mujin

2006年にCTOのロセン博士が、ロボットに動作を自分で考えさせる動作計画技術を産業用に展開したのを皮切りに、世界中のロボットに動作計画エンジンを提供してきたMUJINは、2011年より、ロボットティーチレス技術でロボットを「知能化」する次世代産業用ロボットコントローラ『MUJINコントローラ』を開発・販売している。

滝野氏は同社のビジョンを「誰もが産業用ロボットを使える世界、誰もが産業用ロボットを知能化できる世界、誰もが産業用ロボットメーカーになれる世界を実現すること」と語り、ロボット市場の展望について触れた。

「ハイエンドのアプリケーションビジネスによるロボット知能化でロボット市場が急拡大し、ロボットプラットフォームビジネスによる新規ロボットメーカーの増加で新興市場を掌握し、市場を下支えすると考えています。産業分野に進出するベンチャーは非常にめずらしいのですが、なぜ多くの企業に受け入れてもらえるのかというと、損をするところがいないからだと思います。コントローラが普及すると、エンドユーザはより簡単に安価にロボットが導入できるし、ロボットメーカーはより多くのロボットが売れる。ロボットコンポーネントメーカーは、ロボットが売れればコンポーネントがより売れるし、新規ロボットメーカーは市場参入へのハードルが下がります」

また、「Indutrie4.0」やIoTにおけるロボット産業の役割については次のように述べた。

「工場のデジタライズ化において障壁となるのは、”人”が介在することです。人にはUSBを指すことが出来ないので、デジタライズの対象とはなりません。そこで、”機械、人、機械…”ではなく”機械、機械、機械…”にしていくのがロボット産業の役割です。製造業は重厚長大で時間がかかり、儲かりにくい分野です。それでも社会的インパクトの大きいこの産業をロボットで変えていくことが使命と考えて取り組んでいます」


 

「第2回 ロボデックス」は2018年1月17日から19日までの3日間、東京ビッグサイトにて開催予定。

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