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ノーベル化学賞の技術で実現した「イメージング質量顕微鏡」

text by : 編集部
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(注)この記事は2013年9月20日にastamuse「技術コラム」に掲載された内容を再構成したものです。

 

もし癌組織に特徴的に見られる物質の組織や、細胞内でのピンポイントでの局在分布状況と各ポイントの病変状況を、画像データとして照らし合わせることができれば、病気原因究明や創薬に役立つのではないか。 それを実現しうるイメージング質量分析装置(イメージング質量顕微鏡 iMScope)が島津製作所により実用化された。

質量分析法とは、試料(検査・分析などに用いる材料)が物質として何なのかを決定し、分子構造解析などを行う手法である。具体的には、高電圧をかけた真空中でイオン化された試料が、静電力によって飛行する距離が質量電荷比に応じて異なることを利用して分離、検出する。

かつて、タンパク質や糖鎖などの生体高分子の容易なイオン化は困難だった。それをマトリクス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)開発によって実現した中心人物が田中耕一氏(島津製作所)である。2002年、同氏はこの技術の開発によりノーベル化学賞を受賞した。

イメージング質量分析装置の原理は、光学顕微鏡で観察された試料の画像に基づいて所定の領域を抽出し、その抽出された領域内でのみレーザ光スポットを走査して質量分析を行うというもの。

例えば、生体組織切片のような平板状の試料に、MALDIを利用して含有分子をイオン化し、検出する。そしてレーザを決まった間隔(最小5マイクロメータ以下)で移動させ、試料上のイオンを連続して検出する。 レーザを照射した位置の情報とその位置での含有イオン量を二次元画像化することによって、特定の分子の分布状態を知ることができる。また、検出する分子量スペクトルを変えることで、さまざまな分子種の分布状況を比較することができる。 これを光学顕微用画像と重ね合わせることで、組織の生理状態・病理状態との対比が可能となる。

難治性疾患を始め、脳神経疾患など、アンメット(未だ治療満足度が得られていない)領域での新規バイオマーカ(生体内の生物学的変化を定量的に把握するため、生体情報を数値化・定量化した指標)の発見や創薬研究に大きな寄与をすることを期待したい。

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