2015.04.26 SUN 「軟骨マーカー」で関節軟骨を可視化する
text by : | 編集部 |
---|---|
photo : | shutterstock.com |
(注)この記事は2013年10月29日にastamuse「技術コラム」に掲載された内容を再構成したものです。
近年、高齢化やスポーツ人口の増加に伴い、関節軟骨を損傷する人が増え続け、今や日本国人口の1割、1200万人がこうした関節軟骨のトラブルを抱え、うち700万人以上が変形性関節炎や関節リューマチなどの要治療者と指摘されている。 重症になると人工骨を打ち込んだり、膝関節の骨を人工関節に置き換える手術を行わねばならない。 定期的な診断により、軟骨変性の有無や進行状況を把握できれば、進行を未然に抑える対策を講じることもできる。
軟骨を診る技術としては、「X線タルボ・ロー干渉画像撮影技術」があり、軟骨組織を骨組織と区別して可視化し、摩耗の有無などは見いだすことが可能となった。 しかし、正常軟骨と損傷を起こした変性軟骨の境界がどこか、変性がどれだけ進行しているかを直接評価するには至らない。これを可能にするには生体軟骨組織を染色し、蛍光やX線などで識別する技術が必要となる。
そこで、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の大橋俊孝准教授らは、生体内の関節軟骨組織を特異的(ある特定のタンパク質が特定の化合物を識別すること)に認識する分子プローブ(生体機能の解明・探索を可能とする、あるいは特定の分子を認識することができる分子の総称)として、アルギニンオリゴマーとリジンオリゴマーを用い、 これに蛍光分子やX線吸収物質を結合した関節軟骨特異的イメージングプローブを作製した。これが「軟骨マーカー」である。
マウスやブタの関節軟骨をサンプルとした実験を経て、今後さらなる分子設計を進め、ヒトの生体内での染色と可視化の実証試験につなげていく模様だ。
-
Column2015.04.26 SUN ノーベル化学賞の技術で実現した「イメージング質量顕微鏡」もし癌組織に特徴的に見られる物質の組織や、細胞内でのピンポイントでの局在分布状況と各ポイントの病変状…
-
News2015.07.08 WED 「ロコモーティブ症候群・関節疾患早期診断」市場で特許出願数の多い大学・研究機関トップ5astavisionの提唱する180の「成長市場」のうち、「ロコモーティブ症候群・関節疾患早期診断」…
-
Column2015.04.26 SUN ウェアラブル生体情報センサで除染作業に携わる人々を守る原子力発電所などの核燃料施設においては、作業者が高い放射線量に晒される危険性を伴うため、放射線源の管…
-
Column2015.04.26 SUN ウイルスの力で癌細胞を破壊する近年、ウイルスのゲノム(遺伝情報)を遺伝子工学的に改変し、正常細胞では増えないが癌細胞では増える遺伝…