Interview

「朝起きるのつらいですよね?(笑)そういう身近な問題の解決に自分たちの技術を活かしたんです」ロビット CEO 高橋 勇貴さんインタビュー

text by : 編集部
photo   : 編集部、株式会社ロビット

「朝起きるのがつらい」誰でも共感できるこの悩みに挑んだ「めざましカーテンmornin`」は、2016年7月に発売されると、初回入荷分を1日で完売するほどの反響を得ました。
身近な問題を解決したい、と集まったメンバーは「みんなが本当に悩んでいること」と「実現のスピード」にこだわり抜き、設備や流通にもその理念を貫いています。ロビット社CEOの高橋さんにお話を伺いました。


■身近な問題を解決したくて創業、作れるけど実績の無い日々


―ロビット創業のきっかけは何ですか?

僕は大学の研究室で宇宙開発に取り組んでいて、惑星探査機の省電力化プロジェクトをJAXAと共同で進めたりしていました。
ただ、宇宙の研究は10年後や20年後を見据える長期的プロジェクトばかりです。
当時から「もっと生活に身近で、短期的なメリットをもたらすようなことがしたい」と考えていました。

その同じころに、色々ビジネスコンテストに参加していたのですが、
ある時「人が多く集まるイベント会場などで、行列を解消するロボット」というアイデアを出したら優勝しまして、「これに本格的に取り組んでみよう」と中央大学の仲間に声をかけました。

 

―それで創業メンバー4人が。

僕以外の3人は大学の先輩なので既に一流メーカーやIT会社に就職していました。それで比較的時間もある僕が法人化や会社設立の手続きとか、協力してくれそうな企業へ会いに行ったりしていて、その流れで僕が代表を務めることになりました。

他の3人も、大手企業で責任のある仕事を任され活躍はしていても、「自分が本当に作りたい、身近な問題を解決できるものはいつ作れるのか?」という思いがあったようです。

 

―「行列解消ロボット」はその後どうなったんですか?

実際は進めると大変でした。例えば人が密集する場所に警備員さんがいて、それをロボットで代替する。
万が一、その場所で命に係わる事故が起きたらどうなるか?
その時ロボットしかいなくて、警備会社の人は誰もいない、という状況を考えると、現実的に導入は難しい。

 

―いきなり躓いてますね

そこから色々試行錯誤が続きました。
工事現場の管理システムとか、そういうサービスを作っては、ニーズがあるか色々な企業を回る。うまくいかない、また別の何かを作る、これもダメだ、と

 

―かなりつらいですね・・・

何もサービスがうまくいかないので、例えば投資家にお会いしても「僕たちは作れます」「でも、実績は何もないです」しか言えないんですよ。

それで、ある日思ったのが「ハードウェアで短期間に素早く作って、素早く失敗し続けている」
これは自分たちの強みなんじゃないか?
「僕たちはモノづくりできるチームで最も早く動け、試せます」と色んな人へアピールし始めて、状況が変わりました。

 


■ハードウェアでリーン開発が出来る。たどり着いた自分たちの強み


―モノづくりを早くできることの価値がわかる人と出会うわけですか

はい、僕たちのチームは「ソフトウェア開発」「メカ・機構設計」「組み込みや回路」がチーム内に最小限の人数で揃っていて、速いスピードで作って検証ができる、しかも全員兼業ではなくフルコミットで取り組んでいます。
「こんな理想的なチームは中々ない」と評価・支援してくれる方が現れました。

 

―確かに、ハードウェア領域でリーン開発を実践できるのは貴重だと思います。

ええ、そこからは支援してくれる方と一緒に、「世の中のここにチャンスがあるのでは?」と議論しては試作する、という期間が続いたのですが、試作品を持ってヒアリングしていい反応を得たとしても、いざ製品化・量産化となると、金型を作るための大きな金額の初期投資を検討することになります。
一定の売上が見込めなければ赤字ですから、その決断が難しいという状況に何度か陥りました。

そうなると、自分たちが企画段階から「これは絶対売れる!」と思えるものじゃないと決断できない。
それで、自分たちの身近な悩みは?多くの人が本当に欲しいものは?と試行錯誤して「mornin`」に至ります。

 

―最初に全員が言ってた「身近な問題の解決」

ブレストしていて「そういえば、朝起きるのってつらいよね」と。
まあ、4人全員朝が弱かったってのもあると思います(笑)

 

―そのアイデアに迷いは無かったんですか?

実は、メンバー全員が必死でアイデアをひねり出したわけでは無いんです。
むしろ「ひねらないように」して、自然と「すっ」と出てくるものを大事にしました。
無理やり出したアイデアって「本当にそれ悩んでいる?」ってなるので。

数千円、数万円出して物を買うって、本来凄くハードルの高い行動で、
自然にその行動に移せるものは何?と考えると、「あったら便利かもね」じゃダメで、本当に「どうにかしないと」と普段から誰でも考えている事を突かなければいけないなと。

 

―これだ!というアイデアが決まって、何か変わりました?

環境ですね。
試作品を開発して、とりあえず機能的に動くところまではすぐ辿りつけます。
その先の耐久性や信頼性まで実現する場合、メカの機構的な部分が重要になります、そこを毎回外注していると時間が掛かりすぎてしまう。

mornin`はカーテンレールに装着しますが、その部分にサスペンションが入っています。
その強度が「レールに装着できるか」「しっかりレール上で動く時のパワーが出るか」に関わります。
カーテンレールって、形状が違うものが何種類もありますから、全てに対応するには1ミクロンレベルの調整が必要です。

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カーテンレール取り付け時の様子。何種類もあるレールに対応し、安定動作するために1ミクロンレベルでの調整が必要だった。(※1ミクロン=0.001mm)

 

 


■「朝起きるのつらいよね」アイデアを形にする過程で得た気づき


―1ミクロンの調整を外注するのは大変そうですね・・

外注だと1週間掛かるんです、1ミクロン調整してまた試して、と10回試行錯誤したら約3か月です。
そんなお金も時間もかけていられない、品質も妥協したくない。

そこで、試作品完成までの品質とスピードを実現するため、社内設備のみで出来るようにしようと決断しました。
300万円掛かる機械も導入して、小さな町工場レベルの環境を整えました。

そのおかげでmornin`の開発も捗り、現在着手している新製品でも迅速な検証ができるようになりました。
周囲が「2~3年は掛かるな」と思うものを、飛躍的に速く実現できます。

 

―ロビット社の事業として、企業向けソリューション事業も展開しているのはそういう経緯ですか

そうですね、CNCのIoT化事業とかです。
あれは社内でmornin`を試作するために導入した3次元で削り出す機械があって、使っているうちに色々悩みが出たんです。
じゃあ解決しよう、とCNCのIoT化という事業が生まれました。

これも、僕らがモノづくり業者として悩んでいるので「世界中のモノづくり現場も同じはずだ」という、身近で「本当に悩んでいるどうにかしたい課題」ですね。

※CNC(computerized numerical control) 機械工作において工具の移動量や移動速度などをコンピュータによって数値で制御すること

 

―mornin`は参入市場でいうとIoTですよね

そうですね、まずうちは【家電IoT】と言えますし、【スマートホーム】も当てはまりますね。
あとは【センサーソリューション】ですね、モーターが回転してカーテンレール上を動くので強いて言えば小型の【ロボティクス】なのかもしれないです。

 

―センサー技術なので、睡眠・住環境以外にも展開するのかな?と思っていました。

製品を出した後、そういった相談を受けたことはあります。
ただ、「睡眠」のように自分たちで実感している悩みではないので、ニーズが掴みにくいです。

今後「これは世界中の人が悩んでいる」と確信が持てればやる可能性はあります。
有難いことに色々な相談を受けていますので、なるべく話す機会は多くセッティングしようとしています。

 

―製品リリース後、予想外の反応は?

ありました。多くの女性が、防犯目的で購入していたんです。
量販店にも卸しているのですが、スマート家電ではなく「防犯グッズコーナー」に置かれていて「朝起きるのがつらい」でお金を出しているのは男性中心だなと感じました。
この「防犯目的」に気が付いたのは、製品を出してからなので、初期のPR時点では全く意識しておらず完全に予想外の反応でした。

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取材時に撮影したmornin’展示用モック。初期時点で想定していなかった「防犯面」のアピールもしっかりと記載されている。

 


■多くの人が悩んでいる。ならば多くの人の目に留まる場所に


―いま量販店の話が出ましたが、mornin`は一部のネット通販だけに留まらずかなり店舗販売に力を入れている印象を受けました。

そうですね、最初から3,985円という価格設定も含めて「できるだけ多くの人に使ってほしい」という思いが強かったです。
日本人は2人に1人が朝起きるのがつらいと感じている、という調査結果もあります。
ならば目新しいガジェット好きの人たちに留まらず、2人に1人が求めているからこそ、なるべく多くの人たちの目に留まるところに展開したかった。

 

―でも販路拡大は、リソースの少ないベンチャー企業にとって大変じゃないですか?

もちろんその通りです、そこは正直「気持ち」の部分が大きいですね。一部の人が熱烈に使うのではなく多くの人が悩んでいる問題に「解決策」を提示したい。
そしてmornin`はロビット社にとって最初の製品ですから、この製品を通じてうちの会社の事を知ってもらう。

その先に「ロビット社で働きたい」とか「今後のロビット社の製品に注目しよう」と感じてくれたらと思います。

 

―顧客も採用応募者も、関わり方が違うだけでロビット社への支持という共通点があると

そうですね、採用面も試行錯誤している段階ですので。
いまは研究室の後輩がインターンで協力してくれて自然と20代が多いですが、大手メーカーで有名なロボットを作っていた方や、アドバイスしてくれる方など30代以上の方も徐々に増えています。モノづくりでは特にメカ・機構設計の部分で経験が活きる部分も多いので有難いです。

 

―これから入る方に求めるものは?

まず睡眠に関する製品と工作機械に関するサービスを展開していますから、この2つに共感してもらえるかどうか。
それがあればある程度技術スキルについては後からついてくるのかなと思います。
ただ、スピード感を大事にしていますので、自分から能動的に動く即戦力の人が理想ですね、まあ当たり前ですが(笑)

 

―企業向けソリューション事業は工作機械を扱いますし、サービス品質は重要ですよね

本当にそうです、工場で導入するものですから、まず「信頼性」です。
「非常事態にスマホやタブレットに通知」という機能があるので、信頼性が揺らげば大げさではなく人命に関わります。
あと業務効率が売りのソリューションサービスですから、品質が悪くて結果的に手間が多くなれば全く意味がなくなります、工場の中には「クラウドにデータを上げる」という手法への懐疑的な反応もあるので、セキュリティ面で信頼性を伝える必要もあります。

 


■世界中の人が睡眠で悩んでいる。1人でも多く届けたい


―今後の成長シナリオを教えてください

2つの軸があります。
まず会社の収益面を支える基盤として、法人向けの工作機械のIoT化サービスはしっかり進めていきたいです。
業界の状況や、顧客へのヒアリングなどから、ビジネス的にしっかりと伸ばせる感覚もあるので。

そこで出た利益を、もう一つのコンシューマー向けのmornin`や今後の製品を展開するために投じていきたいです。
これはコンシューマー向けの製品で中途半端に利益を狙った価格にしたくない、そして製品を通じてロビット社の知名度を上げながら次の製品に期待するファンを増やしていきたいので。

あと、何より世界中に睡眠で悩んでいる人が多くいるでしょうから、mornin`を使って解決してほしいなと。
1人でも多くの人に使ってもらいながら高い利益率と両立させるのは難しいので、この2つは割り切っています。

 

―睡眠で悩んでいるの日本人だけじゃないですもんね

はい、万国共通な悩みですし製品はなるべく低価格にしていますから、日本より所得が低い東南アジアやアフリカ、中東にも展開していきたいです。

mornin`を発売して反響がありましたが、まだロビット社は日本国内で1つ製品を売り始めただけです。
今後2年3年と経過する中で、売上を10倍、100倍と増やしたいですね。


高橋勇貴 株式会社ロビット CEO
学生時代はJAXAの特別研究員として惑星探査機の開発に従事。宇宙空間で駆動可能なアクチュエータの開発により、惑星探査の省電力化に貢献。多数の起業家コンテストへ経営戦略担当として参加し受賞。その後株式会社ロビットを大学時代の先輩と一緒に創業。開発以外の業務に従事。

インタビュー:波多野智也(アスタミューゼ株式会社)