Interview

SEQSENSE株式会社 中村CEO・黒田CTO「労働人口減少という現代社会において、自律移動型ロボットに寄せられる期待はとても大きい」

text by : 編集部
photo   : 編集部,明治大学,SEQSENSE株式会社

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先進国を中心に今後世界的な高齢化、労働人口減少が予測されている。SEQSENSEが発表した「SQ-1」は、こうした社会背景もあり警備用の自律移動型ロボットとして発表当初から大きな反響を得た。
自らを「ロボット研究の中では異端」と評する黒田CTOの研究成果から生まれたこのロボットについて中村CEOと黒田CTOに話を伺いました。


■自律移動ロボットは、労働人口減少という社会問題を解決する


―自律移動型ロボットの特色を教えてください。

黒田CTO(以下黒田):その名の通り、誰かが操縦するのではなく単体で動きまわるのですが、そのためには自分の位置を正確に把握する必要があります。周囲のマップも正確に計測できなければいけません。
実は、こうした技術は研究段階のものはあっても、実用に至るレベルの技術はあるようで無いんです。

 

―ウェブサイトにも「比類なきセンシング技術」って書いてありますね

そもそも、ちょうどいいセンサーが無いんです。

 

―ちょうどいいというのは?

大きさも、消費電力も、性能面も、コストも全ての面ですね。
例えば、無人運転車っていま世界中で研究が進んでます。あれも周囲の状況を精密に把握する必要があり、巨大な3Dセンサーを屋根に搭載しています。1台で1500万円くらいするので、無人運転の実用化にあのセンサーのコストがネックになっています。

 

―ロボットも同様

はい、車で搭載している3Dセンサーをそのまま使うにはコストも大きさも問題になる。
しかし機能的に劣ったものでは許されない。あの車載センサーに匹敵するものが必要ですが、そういうセンサーは存在しないんですよ。

私たちの技術は、あの車載に使うレベルのセンサーを小型化を実現して搭載しています。
そのセンサーの製造技術と、センサーから得た情報の処理部分において、特許を出願しています。

 

―施設内で動くなら、小さな突起部分とかも検出できないとダメですよね

そうですね、例えば細いパイプ椅子があるとして、世の中によくあるセンサーではそれが「椅子」だとはわかりません。椅子の足のパイプ部分を検出したら「細いパイプが4本あります」しか判らずに衝突してしまいます。

 

―その技術を、商業施設やオフィスのセキュリティに特化して使う理由は?

中村CEO(以下中村):自律移動ロボットは、実用化を考えれば色々な選択肢がありますが、日本国内も世界的に見ても、労働人口の減少という社会課題がありますよね。
中でも、製造業や警備という領域では人手不足が著しいんです。

一方で、日本は海外からの観光客も多く、3年後にはオリンピックもあり一層警備面での増員が必要。安全、安心が売りの日本において、警備面での人手不足はとても重要な課題なんです。経営資源的に、まずは絞って「警備でいこう!」という判断ですね。

 

―実際にニーズは多いですか

実は、発表前には半々くらいの確信しか持っていませんでした。
ですが昨年秋に創業して、色々なメディアに出ると思った以上に反響が大きくて、警備会社さんもそうですし、ビルのオーナーさん、更には建設会社からも沢山の声を頂きました。

 

―では当初の仮説通り人手不足が深刻だった

はい、極めて人が足りない。しかも今後高齢化も進み増やせるメドも無い。
切実感が凄くて、人が不足してるならこういうロボットで埋めていくしかない。という印象です。

ビルや商業施設だけでなく、データセンター、変電所、図書館の蔵書管理、など意外と「人が24時間監視しなければいけない場所」って多いんです。


■「飛ばない飛行機に興味はない」子供の頃から一貫した実用性第一主義


―この技術は黒田さんの大学での研究成果がもとになってるそうですが、起業を考えたのはいつ頃からですか?

黒田:僕は会社を創ること自体初めてなんですが、起業は10年以上前、2004年頃から考えていました。
2004年から2年間MITに在籍したのですが、そこでは超高速で走行するオフロード無人運転車の制御に取り組んでいました。

 

―そこでの経験が起業を意識させた

はい、研究だけではもう意味が無いと感じました。
というのも、海外では論文を書く時点で「何万キロ実際に走行させたデータに基づいて」とかそういうレベルなんです。

研究施設内でちょっと実験しました。なんてレベルじゃ実世界で動かせるようにはならない。
その後JAXAの「はやぶさ」プロジェクトなどにもかかわるのですが、当時から自律移動ロボットの研究をしていて、実用化していかないと埒が明かない。そのためには事業化しなければと考えていました。

 

―それで中村さんと出会う

中村:僕と黒田は5年前くらいから知り合いで、2年ほど前に黒田がTISさんとの共同研究プロジェクトをスタートさせるのですが、そこで「プロジェクトを推進できる人が必要だ、来てほしい。」と声が掛かりました。

そのプロジェクトがそのうち外部と接触する上での必要性や、昨年秋のジャパンロボットウイークへの出展などで「法人化したほうがいい」という話になりまして。
僕は金融畑出身でしたのでファイナンス戦略や、事業パートナーのTISさんやジャフコさんからの出資を頂いたりそういった役割を担って、いまやっとシード資金がしっかり揃ったという段階です。

 

―ロボットベンチャーって「鉄腕アトムに憧れて」みたいな話から意気投合するするイメージありました。

黒田:僕は、学生だった頃からロボット研究分野では相当異端だと思います。
最初から音声認識やヒューマノイドとか、人と親和性のあるロボットの研究を一切やったことがないんです。

 

―実用化する研究一筋なんですね

日本って、先ほど仰ったようなロボットアニメを実現!という夢のある研究が多いけど、あれ世界的に見たら日本特有のガラパゴス現象ですよ。
軍事研究を通じて、深海や災害現場とかで実用的な、人間の代わりに深海や災害現場で役に立つものが大事。

 

―実用第一の考えは、やはりMITでの経験が大きいですか?

いや、子供のころからです。
小さいころ、飛行機とかロケットとか大好きだったんですが、人とお喋りするようなロボットには関心が無かったんです

親戚が良かれと思ってロボットの人形を買ってくれたりするんですけど、正直全然嬉しくなかったんです(笑)

 

―なぜ(笑)

実用的じゃないからです。
車や船の模型は楽しいんです。モーター搭載して実際に走ったり水に浮かべられるから。

でも飛行機のプラモデルはつまらない。だって飾るだけで飛ばないじゃないですか

 

―子供の頃ロボットの人形が嬉しくなかったのに、のちにロボット研究に関わるんですね

実は大学に入って最初に専攻したのは「船舶海洋分野」なんです。船は動きますから。
ただ、入学してすぐ気が付きました。「あ、船ってもう研究が面白い時代は終わってるんだ」と。

じゃあいま最先端はなんだろう?となった時に「ロボット」だったんです。

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JAXAではやぶさ2に搭載するMINERVA2の無重力フライト試験をフランスで行っていた頃の黒田CTO
研究に従事しながらも、ロボット研究の事業化を模索していた。

 


■ロボットが派手で珍しい時代から、地味に黙々と働く時代へ


―ちょっと事業の話に戻ります。ロボットの監視システムって、人と接触して事故が起きたり、警備会社としては懸念材料もある気がします。

中村:僕らは、最初はまず夜間巡回など人が居ない場所、もしくは人が少ない場所での活用にフォーカスしています。
まずはそういった場所から初めて、徐々に人ごみの中でも活用していければと考えています。
人が密集する場所は、非常にレベルの高い動きが求められますから。

 

―まずは必要な場所にフォーカスする。

そうですね。
我々の警備ロボットが複雑なタスクをこなすことよりも、まずは施設内に異常がなく、いつもと変わらないことを確認するということのほうが大事です。そこに注力していきます。

 

―人が居ない場所の警備と、人が密集してる場所は事情が違うんですね。

日本特有の状況もあると思います。実際海外だと通用しないケースもある。
海外の警備は、本当に危ない人が現れたら銃を所持して時にはその不審者を制圧する。
日本の警備はそういうものよりもむしろ「管理・監視」が主流なんです。

あとは「なんとなくこいつ怪しいかも?」っていう直感があるじゃないですか
ああいった感覚をAIで学習して、ロボットでも不審者の検出が出来るようにしていきたい、とかは考えています。

 

―画像認識や行動パターンの解析で?

それもありますが、不可解に一か所にずーっと居続ける。とか普通の人が見たら「なぜかわからないけどあの人おかしいな」をデータ化していく、そういうことが出来ると警備員の拡張ができるのかなと思います。

 

―今後の計画は

いま、実証に耐えうるレベルのものを基本設計から着手していまして、今年の夏には第一弾の試作機が出せるようにしたいです。
そのさらに先ですが、最もシンプルな夜間巡回が出来てコスト・機能もしっかり実用的なロボット、それを来年夏くらいには商用化できればと考えています。

 

―こういうロボットが当たり前のように夜間巡回する世界がくる

ロボットって、今はまだ「珍しいもの」じゃないですか。
だからビルで実験しようとすると、人が集まってきちゃうんです。

車も鉄道も一番最初人類が目にしたときは珍しくて集まってきちゃう。
ロボットも、数年経てば「そこに居ても当たり前」なものになると思います。

黒田:実は大学の研究室で作った試作機は、既にキャンパス内で走らせているのですが、もうだれも見向きもしないんです。カメラを搭載しているので行き交う人の目線を見ても、だれもロボットの事を見てないんですよ

 

―未来の日常ですね

はい、何年後かの世の中を垣間見ている気がします。
みんな、慣れるのは思ったよりも早いんだなと。

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SEQSENSE社の拠点は明治大学生田キャンパス内の地域産学連携研究センター・テクノロジーインキュベーション室にある。
研究に必要な環境、施設が揃いながらも新宿に電車1本で出られる利便性も兼ね備えている。

 


■ロボット研究は、もはや実用化しなければ無意味な時代


―創業して半年、これから組織を形作るうえで、どういう社内文化にしたいですか

中村:いま、有難いことに人が増え始めたフェーズで、3月に4人しかいなかったのが6月の時点で13人になったんです。
事業パートナーのTISさんからの出向、黒田さんのかつての教え子が来てくれたり、自律移動ロボット研究をATRや筑波大学で進めていた若手の方など

 

―急速に増えてますね

それで、僕はこの会社の中でいまのところ唯一の文系出身なんです。
だからあまり現時点で僕が「こうしたい」とか「こういう人が欲しい」って煩く言う状況じゃないと考えています。

 

―優秀な方が集まっている

能力もそうですし、エンジニアの中でも尖った領域に経験があって、自分の趣味と仕事に境界線が無いような人の集合体だなと感じています。常に新しいものを物凄く追いかけています。

 

―仕事だから、と割り切っていない。

そう、その理由を考えてみるとやはり自律移動ロボットというのが「先進的だから」だと思うんです。
そういう先進性、新しいものを作りあげてその中で腕を磨いていきたいという方にとにかく集まってもらって、動きながら考えていきたいです。

根底に「ちゃんと実用化してビジネスとして成り立つものを作るぞ」という意識さえもっていてくれれば、僕からうるさく「こういう会社にするぞ!」なんて言う必要も無いので。

 

―最後に、異端児とはいえロボット研究をずっと続けていて、これからSEQSENSEを通じてロボット研究にどう貢献したいか教えてください。

黒田:いま大学でのロボット研究は岐路に立っていると感じています。
かつての車や飛行機、船舶の分野が辿ったのと同様、産業化して社会的なものになる中で研究施設内だけで出来ることの価値がなくなってきています。

 

―黒田さんが海洋船舶を専攻してすぐ「ああこの分野は違う」と思ったあの体験ですか

そうです、世界のトップジャーナルに目を通せばカーネギーメロン大学は自分たちの研究がNASAに採用されて「月を走ったデータです」という論文や、スタンフォード大学が「グーグルの車に搭載して何千Km走ったデータを基に」という論文ばかり載ってます。

その中に、国内の大学で施設内で数km走らせたデータを基にした論文があったとしても誰も見向きもしないんです。

 

―実用化していく中で研究を磨くフェーズ

はい、車も飛行機も世界中で何千台、何万台が出荷して動いてる、ロボットもじきにそうなります。
僕らはロボットをキャンパス内で数台動かすのではなく、出荷された1000台が動く、それによってセンシングした情報はリアル空間のデータを取得していきます。
こういう最先端のデータを機械学習などで処理していくことで、ロボット研究に大きな価値をもたらせると考えています。

 


SEQSENSE株式会社
中村 壮一郎 Co-Founder, CEO
京都大学法学部卒、東京三菱銀行,シティグループ証券、Citigroup Global Market Inc. (New York)を経て独立。中小企業向け融資や、LBOファイナンスに従事

黒田 洋司 Co-Founder, CTO
東京大学大学院工学系研究科博士課程後期修了 博士(工学)、JAXA宇宙科学研究所共同研究員 はやぶさ1/2PJメンバー、東京大学生産技術研究所研究員、マサチューセッツ工科大学客員准教授(`05-`06)、明治大学理工学部機械工学科教授

インタビュー:波多野智也(アスタミューゼ株式会社)

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